春は出会いの季節

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💠あいす→ ガタン……ガタン…… 舗装されていない砂利道をバスが進む。窓の外に広がる田畑とは似使わず、車内は派手な大学生で混雑していた。 華月は窓の外を眺めながら昨日の事を思い出していた。 ………… 「着いたー!!」 まるでマラソンランナーのごとく両手を挙げて校門をくぐる蜜柑。 その右手は華月の左手を握り締めている。 大学にたどり着くまで一体何人に道を尋ねたことだろう。ただでさえ人の少ないこの町ではまず人を探すのが一苦労だった。 「あれ……?」 ふと辺りを見渡すと、校内は蜜柑達と同じようなスーツ姿の男女で溢れていた。 「終わったみたいだな……入学式」 少々息切れしながらも華月は冷静に状況を判断した。 「えぇー!!せっかく走って来たのに!?」 「仕方ないだろう」 「だってだって!!入学式ではサークル紹介があったんだよー!!」 悔しそうに叫ぶ蜜柑。まだ繋いだままの手をブンブン振る。 「サークル紹介?」 「うん!この大学にはたっくさんのサークルがあるんだよ~」 キラキラ輝く瞳は足下に落ちているビラを捕らえた。 『サークル勧誘期間☆  4月3日~10日まで☆☆』   華月の嫌な予感が…… 的中した。隣りを一瞥すると更に輝きを増した瞳と目が合ってしまった。 「じゃ、私はこれで」 そそくさと逃げようとするも時既に遅く       ・・ 「うん、また明日ね!」 ………… というわけで半ば強制的に学校に来ることになったのだった。 (サークル……ねぇ) 思わず溜め息が漏れる。バイト三昧の生活を考えていた華月にとって、サークルという言葉はどうにもしっくり来なかった。 それでも約束(?)通り大学に来る辺り彼女の面倒見の良さが窺える。 桜真っ盛りな大学は桃色。 私達のキャンパスは何色に染まっていくのだろう━━ さぁ、大学生活の幕開けだ━━    
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