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「ぁ―――」
声が出ない。
彼が、こっちを見ていた。
「あぁ~あ、見られちまった」
高くも低くもない声が場違いなほど、明るく響く。
「でも、仕方ないなぁ。さっさと逃げろよ。僕は一日一回しか人を殺さないってのがモットーなわけ。でも、逃げないなら殺しちゃうよ~?」
「――――」
「何?死体見るの初めて?あ、そりゃそうだわな。お前はただの女子高生だし、見慣れてんのは僕だけか!?ギャハハハハハハハハハ!!!」
笑い声が反響する。
ジーンと頭の中に妙な響きを残す。
ゴクリ。と唾を飲み込んだ音が、大きく聞こえた。
「な、んで――」
みっともないくらいに声が震えた。
「何で?…何のこと言ってんだ、お前?」
「……何で、人を殺したの?」
キョトンとしたあどけない表情を浮かべた彼。
そうだ、見る限り、私と彼は同い年だ。当たり前のことに、今になって気付く。
クフッ。と、彼が笑った。小さかった笑い声が、はっきり分かるほど大きくなる。
「クッフフフフフ!?ギャッハハハハハハ!!馬鹿だ!!馬鹿がいる、とんでもない馬鹿がいるぞ!?」
馬鹿…?私が?
笑い続ける彼。腹を抱えて笑っている。
何が、そんなに可笑しいのだろう?
頭の中で笑い声が反響する。だんだん、笑い声が大きく、大きく、聞こえてくる。
これ、は――頭の中から?
何で、何で?何で?!
分からない、分からない―――…
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