×彼と私と赤い世界×

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「だから、言ってやんよ」  冷たい。まるで、鋭利な刃物のような声。  ハッと、我に返った。 「どんな理由があろうが、そんなことは許されない」 「あなたが、……あなたが、そんなこと言えるの?」  誰よりも人を殺している、あなたが――? 「言えるさ」  彼は、断言した。  ほんの少しも迷いがない。真っ直ぐに、肯定する。否定することは、許されない。  それは、純粋だとか、無垢だとか言う感情に似ていた。 「教えてやろうか?僕は、人を殺すことの罪の重さを知っている。誰よりも、何よりも、だ」  再び、断言する彼。その彼の表情が急激に変化する。ニヤリとした笑み。そして、純粋な悪意。  両手を左右に広げてクルッと一回転して、スラリと立った。  そんなに身長は高くないのに、何故か彼が大きく見える。 「だ・か・らっ。華麗に、優雅に、美しく、躊躇なく、一瞬の痛みも感じさせずに、圧倒的に殺す。その後にバラバラにしたり、ぐちゃぐちゃになるまで斬ったりはするけど………ま、食欲の問題かなっ」 「食欲?」 「そ。食事と一緒だ。僕は人を殺さずにいると、禁断症状が起きちまう。それは、何も食べずにいて、食べ物を目の前にすると吐いちゃうのと同じだろ。人はそこら中にいるかんな。つ・ま・りぃ~、僕は人の死を喰わなきゃ生きていけないってわけだ」  人の死を喰う…。私には、よく分からない。
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