20人が本棚に入れています
本棚に追加
「だから、言ってやんよ」
冷たい。まるで、鋭利な刃物のような声。
ハッと、我に返った。
「どんな理由があろうが、そんなことは許されない」
「あなたが、……あなたが、そんなこと言えるの?」
誰よりも人を殺している、あなたが――?
「言えるさ」
彼は、断言した。
ほんの少しも迷いがない。真っ直ぐに、肯定する。否定することは、許されない。
それは、純粋だとか、無垢だとか言う感情に似ていた。
「教えてやろうか?僕は、人を殺すことの罪の重さを知っている。誰よりも、何よりも、だ」
再び、断言する彼。その彼の表情が急激に変化する。ニヤリとした笑み。そして、純粋な悪意。
両手を左右に広げてクルッと一回転して、スラリと立った。
そんなに身長は高くないのに、何故か彼が大きく見える。
「だ・か・らっ。華麗に、優雅に、美しく、躊躇なく、一瞬の痛みも感じさせずに、圧倒的に殺す。その後にバラバラにしたり、ぐちゃぐちゃになるまで斬ったりはするけど………ま、食欲の問題かなっ」
「食欲?」
「そ。食事と一緒だ。僕は人を殺さずにいると、禁断症状が起きちまう。それは、何も食べずにいて、食べ物を目の前にすると吐いちゃうのと同じだろ。人はそこら中にいるかんな。つ・ま・りぃ~、僕は人の死を喰わなきゃ生きていけないってわけだ」
人の死を喰う…。私には、よく分からない。
最初のコメントを投稿しよう!