プロローグ

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見える世界は、色付いたキラキラした世界。だけど、音の無い寂しい世界。 生れつき聴力の弱く、今は全くない私は、これに慣れてしまい、寂しい世界を楽しい世界に変えなくてはと、日々躍起になっている。 そんなことしたところで、何も変わりはしないのに、必死になって時の流れに抗おうとしている。 中学三年生。普通なら楽しく学校に通い、普通なら皆とわいわいがやがやお喋りでもしながら、進路の話とか恋バナでもしてるんだと思う。私は中学校に通うことを辞めた。俗に言う、不登校ってやつ。 私は、普通って物が解らない。普通を実感したことが無いから。ねぇ、普通って何??普通ってどうやったら手に入るの?? 今私は、叔母さんの経営する花屋を手伝っている。足手まといになっているかも知れないけれど、叔母さんは何も言わない。いや、言えないんだと思う。 私に残された時間は短く、命の火は確実に小さくなっていっているからだ。
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