プロローグ

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あれから八年。 僕は小学六年生になった。姉、妹、父親との四人暮らし。 幸いな事に、あの事件の目撃者は僕だけで、姉も妹も父親も外出していたため、悲惨な現場を見たのも、父親と僕だけだった。 あの体験が、僕に負をもたらしたという実感はない。だけど、段々と最近になって『あれ』がどういう事だったのかと言うことには気付き始めた。 それでも、今の生活に暗さは感じられないし、母の存在は時間と共に、大分美化されていて、僕はそこに疑問を覚えてならない。 『不倫』という、事実は消え、『まだ若かったのにね』と惜しむ声を聞く度、母の仏壇を蹴り飛ばしたくなる衝撃に駆られる。………反抗期なんだろうか。
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