第一章 「その男、殺し屋」

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 4回程、電話が転送された後、やけに陽気な男の声が受話器の向こうから聞こえた。 いつも脳天気な奴だ。 しかし、仕事は確実敏速。 こいつに調べられない事はない。 名前は確かバナディーヌとか言ったか。  しかしそんな意味のない記号はどうでもいい。 「いつも通り頼む、これから届けさせる」   「あれ、どうしたのいつもはフランス語なのに?」   「ああ、すまない、でもわかるだろ?」  「わかるけどさ、あなたの日本語なまりのフランス語好きなのよ」   おまえのオカマしゃべりの日本語よりはマシだ、心の中で呟き受話器を置いた。     ふとドアの向こうに人の気配を感じ、オレは銃を背中に挿し、ゆっくりと近づいた。 呼び鈴が鳴る。   ドアスコープから覗くような真似はしない。   ドアスコープの少し上から真下まで縦に普通は撃ってくるものだ。       しばらくだまっていると、ドアノブをピッキングする音が聞こえた。   いきなり開けて、質問するのもお洒落だが、お洒落で命を落とすほどジョーク好きじゃない。   ドアの横の陰で待つことにした。   二分、ドアが開く。  まあこのタイプの鍵にしてはかなり速い方だろう。
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