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「そんな!ダミーをシェルターに置いてきたのに?」
レイが小声で言う。
「いや、全く関係ないんだ。おそらく功名心からだ。俺も君もわりと有名だからね。
もちろんジュードが犯人じゃない。彼は引退している」
「じゃあ、誰が?」
「それが困ったことにメインの操縦士なんだ。レイ、まさか潜水艦の運転はできない
よね?」
「できるわ、ソナーはできないけど。普通に航海はO.K」
「さすが。あとひとつお願いが・・・」
「ジュード、トイレはどこだい?」
「あ、左手奥にあるよ」
「ありがと。7年前と逆になりそうだ」
「うん?ああ、わかった」
潜水艦の通路を奥に進む、配管の下をくぐりながら。
硬質プラスチックのドアを開ける。
刹那-
鍵のかかってないトイレの中で男が崩れ落ちる。
その手には銃が握られていた。
「一瞬遅かったね」キスギがもはや屍となった男に言う。
「大丈夫?」レイとジュードが同時に駆けつける。
「ああ 大丈夫だ」
レイが抱きつく。
「大丈夫だってばレイ」キスギは頭を撫でる。
「心配した」レイは泣いていた。
「すまない遅れて」ジュードが謝る。
「さすが、よく覚えてたね。でも助けが欲しかったわけじゃないんだ。相手が最初か
ら銃を持っていたことを見て欲しくてさ。一応、君の部下だろ」
「ああ、ちゃんと見たよ。
7年前は僕がトイレで襲われそうなところを君が救ってくれた。忘れるわけないさ。
でも、どうして、こうなるってわかったんだい?」
「なんとなく」
「そうだったね、キスギ。君には未来が見えるんだった。ところで、どうやって倒し
たんだ?」
「これさ」そう言ってキスギは男に近づき、首筋に刺さっている針を抜いた。
「この武器、私の専売特許なんだけど、貸したの」レイはそう言ってジュードを見な
がらキスギから針を受け取った。
「レイさん・・・あなたは一体・・・」ジュードが首を傾げる。
「コントロールいいわね、初めてにしてはなかなか」レイがキスギの腕を取って言
う。
「昔、投手だったんだ」
腕を組んで前を歩く二人を見てジュードはまた首を傾げた。
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