わがままな殺し屋

交渉

－上海ステアダービル－

　地上２７５ｍ、ガラス細工をちりばめたような７５階建ての近代ビル。

　俺は依頼人に逢いに来た。

　アポイントはない。

　俺は誰でも殺すわけではない。依頼人には「どうして殺して欲しいか」という作文
を提出してもらう。
　その作文が気に入らなければ依頼を断る。
　わがままで最低の屑みたいなプロフェッショナルだ。いやその段階でプロではない
のだろう。
　殺す人間に感情は持たない。
　しかし、殺したくない人間は殺さない。

　ターゲットを聞いてから殺しをキャンセルするということは、それ相当の危険が伴
う。

　それでも俺は生きている。

　いつからか、「予言者（prophet/プロフェット）」と人は呼ぶようになった。別に
何も予言などしてないが、話は大きくなるものだ。否定して回ることもないだろう。

　さて正面から入ることにしよう。