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辺り一面に広がり、ありとあらゆるもの……家や、樹や、更には人までも……
気がつけば、燃え盛る炎が俺の周りのもの、全てを包みこんでいた。
逃げ惑う人々や、その中に混じって人を襲い、暴れ狂う見たこともないような、いびつな形をした獣たち……
此処は一体何処なのだろうか。
ふと空を見上げれば、そこには黒い空が広がっていた。
その空は今にも吸い込まれるのではないだろうかと錯覚を起こす程に黒ずんでいた。
まさに漆黒。
その漆黒の空に不気味に浮かぶ巨大な黒き城。
俺は、何故だか分からないが、その黒き城に言葉では表すことの出来ない程の恐怖を抱いた。
「貴様……後悔することになるぞ……貴様程の力がありながら何故……」
俺は不意に背後からしたその声に驚き、後ろを振り返った。
そこには……燃えるような紅い瞳、そしてその瞳と同じ色をした紅の髪の男。
俺はこの男に見覚えがある気がした。
その瞳の奥には炎が燃え盛り、その紅の髪は風を受け、美しく靡(なび)いていた。
「俺は……俺から全てを奪った貴様らを絶対に許さない」
無意識のうちに発せられたその言葉。
自分が言っているのかすら、さたかではなかったその言葉。
だが、その言葉によって確かに沸き上がる怒りの渦。
やがてその渦は俺の心を蝕んでいった。
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