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夕暮れ時。
1人 牛舎で世話をする夏彦。
いつもの日課です。
まだ あどけなさを残した娘の声がしました。
「夏彦様」
振り返ると 昼間に見た衣を着た 白く美しい女性が立っています。
夏彦は見覚えが無いのに名前を呼ばれ、戸惑って言葉を選べずにいました。
「初めまして、織撫(おりな)と申します。 昼間は かばって下さってありがとうございました。」
そう言って微笑んでいます。
夏彦「衣の話が聞こえていたのですか…お聞き苦しい所を申し訳ございません。
兄は本当は人が良いのですが…あなたは不安だったでしょうね、面目ない。」
織撫は ふんわり笑って
「ひとりで水浴びをしていたもので、衣が無くては外へ出れず困り果てましたわ。
夏彦様、ありがとうございます。私 ここへは 度々 訪れます。 良かったら仲良くして下さいませ。 では、これ以上 お仕事の邪魔になりませぬよう、おいとま致します。」
そう言って 宙に浮き、空に消えて行きました。
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