~現~

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幼い頃、 母が病弱だったために わたしはこの家に預けられていた   わたし自身は細かいことはわからない‥ とても幼かったからだ 母は当時、わたしをそばに置きたがらなかった     「父さん、 夏に貴女が来てくれるんを ホントに楽しみにしてたんよ」 ゆうこお姉ちゃんの少し赤い目に、 新しい涙が浮かんだ   わたしは何も言わずに、 ゆうこお姉ちゃんの手に触れた   「またいつでも来てね」   二人で向きをかえ、部屋を見回す   お姉ちゃんとわたしの喪服が並んで壁にかかって、 かすかに青い煙が漂っていた   おじさんの好きだったタバコのかわりに、漂っていた
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