序章

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 戦い始めてどれくらいの時間が経っただろうか? 目の前に対峙する相手を見て彼は思う。  街の自警団に所属して数年になるが、ここまでてこずる相手はいなかった。  かつて戦争を終わらせ、英雄とまで言われた彼だったがさすがに苛立ちを感じていた。 「何だってこんなヤツが出てくるんだよ……」  ぽつりと毒づくが、それも虚しいことだった。いつのまにか降り始めた雨で視界は悪く、少々息苦しい。 応援を呼びに行った同僚がいなくなってからすでに二時間は経過している。  その時には鬱蒼と茂っていた木々も、今では平地に近い状態になっていた。 「一人で倒せっていう命令かねぇ……英雄も楽じゃない」  再び毒づくと、英雄と呼ばれた彼。“ユート”は相手に向かって疾走した。
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