TЯAP 6

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「そうね……んじゃ、最後に一つ聞かせてくれる?」 「…………なんだ?」 「アンタはいつから私が怪しいって思ったの?」 アメは鋭い剣幕で睨みつけ問い掛けた。 萩野も同じ様な顔で睨みつけ、言い放った。 「………2階の第3TЯAPを解除した時だ」 2階の第3TЯAPは確か、赤と青のコードで二者択一を迫られた時だ。 「解除した後、オレらは一度2階の階段近くに集まった。その時お前はこう言った」 『今はこのメールの指示通りに動きましょう。この通り動いていれば大丈夫よ。じゃないと、非常階段を使った横山達みたいにルール違反になって強制退場になるわ』 「小野寺がメールで指定された3階ではなく、1階に行こうとした時だ」 覚えている。マヤがズルしようとした時の事だ。 結局あの時ズルしても萩野の言う通り生徒玄関の鍵を開ける事はできなかっただろう。 萩野はその時のアメの怪しい言動を忘れてはいなかった。 「あの時、横山達の失格通知には『コースアウト』としか書いてなかったはずだ。なのに何故かお前は横山達が非常階段を使った事を知っていた。その時だ、最初にお前を怪しいと思ったのは」 アメは目を丸くして萩野の話を聞き終わると、ため息を漏らし、また微笑んだ。 「なるほど………うかつだったわ。確かにあの時それを知ってるのは私しかいなかったわ」 萩野はそんな些細な言葉でわかったのか。 萩野の頭にはコンピュータでも入っているのか。 「アンタの想像通り、横山に非常階段の事を教えたのは私よ。まさか本当に行くとは思わなかったけど。飯塚と長谷川さんの自滅はさすが予想外だったけどね」 まるで悪夢の様な言葉だった。 自分の為に…… 他人を犠牲にして…… 私の中でその言葉がフラッシュバックする。 「…………それじゃ、どうしてあの時……二者択一で私を助けてくれたの?」 「…………」 私はようやく絞り出した声で問い掛けた。 他人を犠牲にしてきたのに、あの時アメが電話でヒントをくれなければ私は飯塚の様になっていた。絶対。
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