TЯAP 6

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崩れゆく体育館の中心で呆然と立ち尽してしまう。 流石の萩野でも二人を担いで体育館の入口まで走るのは厳しかった。 萩野は自ら脳内で究極といえる選択を迫られ凍りついてしまった。 人ひとりを犠牲にする選択を。 「は…………ぎの……」 「……!!?」 かすれた様な声の正体は、萩野が抱きかかえていた。アメだった。 「八千草!!?」 「お願い………行って……」 「アメッ!!?」 もう生気のある声ではなかった。 当たり前だ。 これだけの血を流していて、平気なわけがない。 なのに、渾身の力を振り絞って。アメは言う。 「さとみ…ちゃんを…………助けて………あげ……」 「アメッ!!?もうしゃべっちゃ駄目だよ!!?今すぐ保健室で手当を……!!?」 「は………ぎの………」 萩野は黙ったまま俯いた。 その時の萩野の体は…… 「……忘れたの…私は…………あなた達を……殺そうとした…のよ………」 「萩野…………」 萩野はそのアメの言葉を最後に、アメの頭をゆっくりと床に下ろした。 「二人とも早くッ!!!?」 先に入口に走って行ったマヤは扉の所で私達に叫んだ。 崩壊していく体育館。 もう時間がない。 萩野の決心はもう、揺らぐことはなかった。 「萩野ッ!!?」 萩野は動けない私を抱きかかえ、走りだした。
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