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……そして、間一髪。
私達は扉が閉まる一歩手前で体育館を後にした。
萩野が背にした重たい扉が閉まると同時に…………
扉の向こうから
全てが崩れ落ちる轟音が響いた。
私は萩野の腕から降りて。
足の痛みなどまるで感じないほどの絶望を抱えて、扉まで歩み寄った。
泣き叫び、その扉を開けようと力いっぱい小さな拳で鉄の塊を叩き続けた。
やがて、私は足の痛みを思い出し、その場で崩れ落ちた…………
「アメ……アメぇ………」
ウソだ……こんなの…………
こんなのイヤだよ…………
私は拳を真っ赤にして、その場に座り込んだ。
「……もういいだろう沢咲」
萩野は私に近づき、背中越しに
言った。
「八千草自身も言っていただろう。ヤツは自分の為にオレらを殺そうとしていたんだぞ。もしかしたらお前も殺されていたかもしれないのに」
確かに、萩野の言う通りだ…………
だけど…………
「やらなければやられていた。それが現実だ。いい加減に目を覚ませ」
気のせいか、そういっている萩野の声に何故か迫力というものを感じなかった。
むしろ、声が震えていた…………
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