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(本当に家を出たんだよな……本当にここで暮らすんだなオレ。)
ダンボールから物を出すにつれて和樹はそう実感するのだった。
そして、最後のダンボールから写真が一枚出てきた。
その写真はもうずいぶんと色あせていたが、大切そうに写真立てに入れてあった。
写真立ての中では、まだ小さい和樹が幸せそうに家族に囲まれて笑っていた。
その写真を見ていると、これまでの事が走馬灯のように甦る。
気づけば和樹の頬を冷たいものが伝っていた。
「グスッ…父さん、母さん、沙樹……オレ、笑顔でいれるかな?笑って過ごせるかな?」
写真をそっと、机に置いた。
「笑って過ごせるようにさ、そこで見守っててよ。」
ふと空を見上げたその顔は、どこか希望に満ちていた。
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