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ふと顔を上げた。
からすが一匹…
跳ねるように、右へ左へ。
黒い自慢の羽根が朝日に照らされて、瑠璃色に輝く…
「お前、綺麗だな…」
カラスは一声鳴くと不意に飛び立った。
不満げなのか、得意げなのか。
俺には知る術もない。
辺りでは徐々に街が息を吹き返していく。
喧騒が日常を引き連れて、戻ってきた。また日々が始まったんだ。
酒でガンガンする頭を抱えながら、
西口の改札に向かう。
いつも通りに地元行きの切符を買おうとして、
ふと気付く。
ああ、もう居場所はない…。君は、いないんだと。
そして池袋のゴミ置場のネットで寝ていたわけを思い出す。
楽に死にたかった。
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