『一人旅』

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極端に短い昼食を済ませ、私は再度母親を説得にかかった。 『何か食べたの?』と言う質問には適当に答える。 正直に言ったら、また文句を言われかねない。 荷物を背負い直し、立ち上がろうとしたその時、母親から何度目かの返信が来る。 そこには『行ける所まで行きなさい』と言う、半分呆れを含んだ許しの文だった。 私は思わずガッツポーズをとり、『有難う』と返事をして携帯電話をしまった。 『人間』と言うのは単純な物で、心のモヤモヤが一つ消えただけで随分と元気になる。 足取りも心なしか軽くなり、少しではあるが走る事も出来た。 何時の間にか日も来れた頃、私は『お台場海浜公園』と言う場所に到着していました。 海沿いにある公園で、双眼鏡を使うとフジテレビのテレビ局も見えました。 しかし、春なのと時間帯の所為もあってから、周囲はカップルが多い。 一人夕焼けに立つ私はかなり浮いていて、観光客らしき若者達には面白がって写メールを撮られるし、目線は痛かった。 私は出来る限り人目を避け、今日はここで野宿する事にした。 花壇とベンチが一緒に成った場所に荷物を下ろし横にされていた厚さ15㌢位のボロボロな段ボールからカセット式ガスコンロを取り出す。 これは物心付いた頃から家にあり、私よりも遥かに長く我が家にあった物で、それを持って来てしまった。
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