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…ちょっと勘弁して欲しいのだが、どうやら俺の周りにいる連中は、俺を玩具にして楽しんでいるらしい。そして、校長もその一人に入る様だった。
…というか、いつまで頭を押さえているつもりなのだろうか。そろそろ息が苦しくなりそうな、しかし今呼吸をすると取り返しが付かなくなりそうな、そんな状況にある二人、つまり俺とエリーゼ。
そう、今の状況は昨日のアレと全く酷似している。というか、そのままだった。そしてそのお陰か、エリーゼに多少の抵抗が見られ、校長の脇腹やボディーに容赦のないパンチが繰り出されていた。
エリーゼの抵抗が功を奏したのか、校長の手が漸く離れた。計叶は、エリーゼにナイスと言ってあげたい気持ちで一杯になる。
「ぶはっ!…こ…校長、あんた何考えてこんな事を…!」
「ぷはっ!…もう、なんなのよ!こいつ、あいつとぜったいグルだわ!」
校長は計叶とエリーゼの怒りを平然と無視して、何事かをぶつぶつ呟いている。ぷつん、と何かが切れる音が聞こえた気がした。
「…校長…俺、丁度今思いっ切りブチ撒けたいモノがあるんですが…!」
「ほう、若いね。でも、感心しないなぁ。そういう事はフィッツガルデ君と二人きりの、時に…だね…?」
校長の笑みが僅かに引きつった。無理も無い。生まれてこの方ほとんど激情に駆られた事が無く、怒りに身を任せる様な事も無い計叶は、義明が「計叶がキレたらヤクザの組長さんですら言葉を濁す」と豪語するくらいに、怒ると恐いのである。
「…ははは以後気を付けますところで。明日校長室にプレゼントを置こうかと思っているが中身を決め兼ねていてちなみに…校長の右腕と左腕、中身はどっちが良いか教えてくれないか…?」
エリーゼは呆然と、計叶と校長を見比べている。校長は計叶の豹変ぶりに顔を真っ青にして笑っている。そして計叶は、どこからか湧き溢れてくる負の感情を際限無く吐き出している。何か憑いているのか?
「ケ、ケイトっ…?」
「珠澄君、僕が悪かった!何というか、魔が差したというか、ほんの、そう!出来心と言うのかな?僕からの小粋な贈り物と思って…そ、そういう訳で逃げ…!」
られる訳も無く、唯一の出入口である扉を背に校長を追い詰め、計叶は場違いな笑みを浮かべながら宣告した。
「…決めた。どっちも箱に詰める事にしよう。両腕を少しの間借りますよ、校長…?」
校内に、校長の悲鳴が谺した。
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