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「どうやら最近は、体が疲れやすい気候の様です。こまめに水分、及び休憩を取り、校舎裏等で気を失って倒れる事の無い様に。以上でホームルームを終わります」
帰りのホームルームで女教師が言ったこの言葉に、計叶は少なからず動揺してしまう。
…仕方ないだろう、と思う。あの時は、自分でもよく分からなかったというか、明らかに意識が無かった気がする。
…そう言えば、あれから体の調子が凄く良い。恐らく、栄養ドリンク五本を一気に飲んでも、こんな感じにはならないだろう。とか、どうでもいい事を極力考える様にしている。そして、いつまで付いて来るつもりなのか。
…俺から少し距離を取って前を歩くエリーゼを見詰めつつ、こちらに強烈な殺気を送って来て企みを露にしてくれている集団だ。ターゲットは多分俺だ。そして、間違いなくクラスの男子共…より多いから、プラスαだ。
ザッザッと何処かの軍隊がこちらに接近してくる音が聞こえる程の人数がいる。計叶は絶対に背後を振り返らない様にしながら、エリーゼの人気とαの多さに軽い恐怖を覚える様だった。
…流石に怖くなってきた。防空壕の中に軍靴の音が響いてきた時、俺は正気で居られるかどうか分からない。だから、早く自分の部屋に帰りたい。
考えも纏まったところで、計叶は前で陰鬱な空気を漂わせている少女に近付き、手を取った。驚いたエリーゼが計叶の方に振り向く。
「走るぞエリーゼ!」
「ぅあ!えっなに!ちょっと、ケイトーッ!」
エリーゼを半ば引き摺る様にして物凄い速さで疾走していき、曲がり角を曲がった時には計叶の影すらそこにはなかった。それは、そもそも曲がっていないからだが。
「くそ、逃した!」「追え、追えー!」「…つーか、あいつ、あんなに足速かったっけ…?」と、全く気付かずに曲がり角の向こうに走って行った。
「…おぉ~…上手くいったみたいだ」
「…はぁ、はぁ…い、いきなり、なにするのよ、ケイ…ト…?」
エリーゼが固まった。抱えられているからではない、事もないが、二人が立っているのは高い場所。そして、ここは市街地。そう、屋根の上だ。
「はわ、わわ、ケイトが、ケイトに…」
「エリーゼ、高い場所苦手なのか?」
「ちがうわよ!はやくはなしてーっ!」
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