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「ところであなた、なまえなんていうの?」
少女の突然の質問に反応が遅れた。考えてみれば、少女は教壇の前で自己紹介をしようとしていた筈だ。なのに何故、いつの間に、最後尾の席に立っていた計叶の隣にいるのか?
…本当に訳が分からない。何で制服の袖が掴まれているのだろうか。
「なぁに?よくきこえないわ」
…?何か訊かれた様な気がする、何だったか。なまえ、そう、名前。マイネーム。
「俺の名前か?俺の名前は珠澄計叶。平仮名で書くと、たますみ けいと、だ。」
…うん、なんだか小学生に自己紹介してる小学教諭になった気分だ。記憶に留めるために口の中で繰り返す仕草が何とも愛らしい。
「たますみ、けいと…たますみけいと…うん、おぼえた!」
教室内が一気に静まり返っり、計叶を含む全員が言葉を失った。何と言う不意打ちだろうか。眩い光を放っているのでは?と言わんばかりの笑顔に、男子数名が「こ、これが、萌えか…(ガクッ)」と気を失ってしまう。
瞬く間に歓声が沸き起こり、「ナイスだ珠澄!褒めて遣わす!」などと褒めたたえられる始末。計叶は、名前を教えただけだが?という言葉を飲み込む。
計叶が周りから隣りに視線を移すと、青い瞳が真っ直ぐに自分を見ている事に気が付いた。心なしか、自然と口元が綻ぶ。
「…うん、ケイト。うん!ケイトにきめた!」
…ケイト?何か一文字違いの名前を聞いた記憶がある。それにしても、あんなにはしゃぐなんて…本当に子どもみたいだ。
「…あ、そうだ。君の名前は、何て言うんだ?」
周りの皆だけならまだしも、女教師までもがすっかり失念していたらしい。言葉の通り、思い出したかの様に静かにし始める。
「えっと、なまえよね?エリザエール・フォン・フィッツガルデ。でも、ながいからエリーゼでいいわ、ケイト」
…ん?何か引っ掛かるな。エリーゼでいいわ、の後、ケイトって付け加えたか?…聞き方によっては、俺だけ呼んで良いって聞こえなくも無いような。
…ま、それは置いといて。自己紹介の後は万国共通の挨拶をするのが礼儀だ。
すると、エリーゼは計叶に手の甲を向けてきた。これが万国共通の挨拶である。しかし、計叶は何か違和感を感じていた。
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