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「…原義明、俺の入学式からの友人。所謂、悪友だ」
…よりにもよって、何でこうなるのか。何が嬉しくて、こいつの紹介をしなければならないのか。
計叶は思った。こいつが余計な事をしなければ、野郎共から殺気立った視線を送られる事は無かったのに、と。
「悪友?まさか!親友の間違いだろ、計叶!…はっ!そうか、アレか。最初はツンツン、次第にデレデレのツンデレキャラなんだな!はっはっは、愛は奥が深い」
…何だこいつ、いきなり笑い出しやがった。毒キノコでも食ったのか?おいおい、早急にくたばっておけよカス明。
「…ケイトと…ケイトと…」
エリーゼは、とある驚愕の出来事により放心していた。とは言っても、実のところ、計叶の方がエリーゼよりも驚いていたりするのだが。
…全く…前触れもなく背中を押された時は、心臓が止まるかと思った。それにしても、アレは悪戯では済まされない。
…ここから先は聞かなくても構わないが、義明がエリーゼと俺の背中を同時に押したのだった。無論、思いもよらない不意打ちに対応出来る筈はなく、刺激がより強い方の挨拶を交わす羽目になってしまったという訳だ。
計叶の口から自然と溜め息が漏れる。
「くそ、エリーゼちゃんの唇を奪っておきながら…計叶の野郎…!」「こうなりゃあ、殺っちまうか!?」「待て、今はエリーゼちゃんがいる。機を窺え」という、物騒な会話が飛び交う。
…でも、凄く柔らかかったな…
「お、チャイムだな。俺は教室に戻るぜ。ふんふふ~ん~♪」
…ホームルーム終わりか。って、義明の野郎、好き勝手に茶茶入れしといて、何事も無かった様に帰りやがった。ついでに、心なしか嬉しそうに見えた様な気がする。いや、そんな事より、まずはこっちをどうにかしないと。
「…あ~、あの、エリーゼ?」
「………」
「エリーゼ?えっと、うちの学校特殊だから、始業式は自由参加で…その、どうせだから行ってみないか?」
…返事が無い、屍の様だ…いや冗談だけど、本当だったらミステリーだ。
…あぁ、皆帰ってしまった。始業式は自由参加だし、長話を聞くだけだ。しかしだ、何も皆帰らなくてもいいじゃないか。
放心し続けるエリーゼと二人、教室内にぽつんと取り残される計叶であった。
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