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そんなこんなで、エリーゼと計叶は体育館に入った。が、恐るべし自由参加。ここまで特殊な学校は、恐らく無い。
「何で…何で校長しかいないんだ。これは、幾らなんでも自由過ぎないか?」
…校長はニコニコ顔で俺とエリーゼを見ている。いや、そこは笑うところじゃなくて怒るところだろう。
この校長、年は30とかなりの若さを誇っているため、高齢の教師から煙たがられる事数知れず。まぁ、遥か年下の若輩者から指図は受けたくないという気持ちは分からない事もないが、公私混同も甚だしい。
「おお、珠澄君とフィッツガルデ君、ようこそ始業式へ。よし、特別に単位を上げよう」
などと、大仰な動きで驚きを表現する彼は今、教育者としてあるまじき事を平気で口走った。いつか生徒の保護者からクレームが殺到して査問に掛けられるのでは?と、計叶は本気で心配してしまう。
「いや、それはちょっと遠慮したい。仮にも学生だし…」
「いらない、ぜんぶもってるもの」
校長にため口だが、別に最近の若者の様に教師を友達か何かだと思って使っているわけではなく、校長直々の頼みである。曰く、「君とは上手くやれそうだ。よし、敬語禁止。破ったら停学一ヶ月だからね」だそうだ。
…ところで、今エリーゼは何て言った?単位、全部持ってるとか…年幾つ何だろうか。向こうでは何年生だったのか。気になる事は山程あるが、今はいいか。
「ところで校長、始業式って何をすればいいんだ?むしろ、たったの三人で何をしろと」
「そうだねぇ、じゃあ少し現実離れした事でも体験してみるかい?」
…?現実離れって何を体験しろと?全く意味を理解できないが、言葉の通りだとすると、つまりそういう事なのか?
体がぐらついて、計叶は立っていられずに背中から倒れてしまった。
…こんな時に貧血か?情けないな俺。
「さてと、改めて挨拶しようか。僕は…」
目の前で大仰な動きをしているだろう校長の声に違和感を覚え、思わず閉じていた目を開けた。
「実は悪魔と呼ばれる種族なんだ」
「へえ……はぁ!?」
愕然とした。校長の背中に黒い翼が生え、皮膚の色が紫色に染まっていく。徐々に耳が尖り始め、スーツから覗いた手の爪が鋭く伸びた。
悪魔…確かにその表現は合っている。だが、今はそんな事を気にする気にはなれなかった。
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