第2話 夢の始まり

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四月八日の火曜日、午前七時半頃、都美都学園学生寮、別名:朱の夜、一階の五号室。 …改めて自己紹介をしよう。俺は珠澄計叶、至って普通の高校生だ。 …一年生の間は苦労をしておくべきだと思い、20kmの距離を自転車で飽きもせずに登校していたが、皆勤賞を取れただけで良い事は何一つ無く、逆に忙しい真面目な奴だと思われて友人には恵まれなかった。 …それに、片道ノンストップで二時間も掛かるため、朝五時に起床。宿題や予習復習をまめにやっていたので、睡眠時間は五時間前後だった。二月に一度教室内で貧血を起こして倒れた事もあってか、この寮の利用を許可された。 …一人暮らしに中々慣れず、紆余曲折の末に現在に至るわけだが、一つだけ問題があった。それは何か? …この学校は、世界広しと言えども二つと無い校風を持っており、そこに魅力を感じて、特に県外から入学してくる生徒が多く(義明もその一人だ)、学生寮を利用する人数が少なくない。 …よって、寮の部屋に余りが存在しないというのは言うまでも無いわけだ。ここで、始業式の朝の事を思い出してみようか。 …そう留学生、エリーゼだ。彼女の家は勿論外国にあり、ホームステイをしているわけでもない。そして、通常であればそのまま学生寮に入るわけだが、聞いての通り空き部屋は無い。 「ケイト~、のぞいたらおこるわよ~?」 …もう分かっただろう?白羽の矢が誰に立ったのかを。 「大丈夫、子どもに興味は無い筈だから」 …ちなみにこれは校長直々の頼みである。曰く、「君とエリーゼ君は仲が良さそうに見えるね。よし決めた。君の部屋をエリーゼ君とシェアしてくれるかい?拒否したら退学だけどね」だそうだ。 「なに?わたしがこどもだっていいたいの?」 実際子どもではあるが、そんな事を口走ろうものなら何をされるか分かったものではないので、計叶は口には出さないでおいた。 「ん?そうなのか?てっきりエリーゼは大人のレディ、だと思っていたんだが」 嘘だっっっ!!!!と鬼気迫る形相で叫びたくなる衝動に駆られるが、慌てて押さえ込む。 「え?わたし、おとなのレディにみえる?」 「見えない、事も無いと思う」 随分曖昧な表現方法を使ったなと内心で呟くが、その一方で、きまりが悪そうにするエリーゼが可愛らしく思えてくる。 …ん?ちょっと待て! 「エリーゼ!服、服!」 こうして、慌ただしく一日がスタートした。
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