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「やぁ珠澄君、おはよう。こんな所で会うなんて奇遇だねぇ」
「ここは校長室だ。校内放送で呼び出しておいて、どんな奇遇だ」
都美都学園二階の最奥地、その名も校長室。明らかに調度品の数が多いため、豪華と言うより雑多と言った方がしっくりくる。
計叶の隣りで呆気にとられているエリーゼは、何この部屋?と言わんばかりに目を丸くしている。
「…なに?このへや…」
やはり言った。日本の文化に慣れていないエリーゼでも、この部屋は異質だと判断している。
…何故か義明は、これが変だって言ったらうちに来れないぜ?とか言う始末。片付けろ。
「おやおや、つれないねぇ。昨日の話の続きをしようと思っていたのに」
やれやれと、校長は大仰な動きで呆れを表現した。この部屋の良さが分からないのかい?とでも言いたげに。きっと常人には理解出来まい。
…何だって?昨日の話の続き?…破壊と転生の神とやらが生き返ったから倒してくれとか、ファンタジーや小説にありがちな展開を繰り広げるつもりなのか?
「う~ん…それでも良かったんだけど。ほら、君って弱いだろう?魔物にすら勝てないと思うんだよねぇ」
「ひ、人の心を勝手に読むな!」
…ちょっと待て。それでも良かったって、言うつもりはあったのか。というか、魔物って、ゲル状のスライムみたいな奴とか、そんな感じだろ?あんな架空の存在が現実にいる訳ないだろう。
…いやいや、君は何を言っているんだ。前以て言ったじゃないか、これはれっきとした事実だって。
「き、気安く人の思考文に割り込んで来るな!」
…いやはや、君はからかい甲斐があるね。一年くらい楽しめそうだよ。
「わ、分かったから、俺の思考の中から出て行け!」
「ケイト?さっきからひとりで、だれとはなしているの?」
…あ、そうだった。これじゃあ何も無い所で誰かと会話をする、頭がアレな人に思われても仕方ないじゃないか。く、昨日の話は何処に行ったんだ?
「…?」
計叶の目の前に青い瞳がある。吸い込まれる様な、不思議な感じを覚える瞳だ。それが気遣わしげに、じーっと計叶の顔を見詰めている。
その瞳がエリーゼものだという事を理解し、距離が近過ぎる事と、悪戯っぽく微笑む校長が横で何か構えている事を訴えようとして、計叶はデジャヴを感じたのだった。
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