エウレカ物語Ⅰ

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まだ、この世界が混乱していた時代。 平和を望む者たちと、戦いを望む者たちの対峙した世界。 暗闇に包まれ、悲鳴と怒号が交じる中で、それはやがて、全世界を包み込んでいく。 希望という光。 夢という光。 この二条の光は、暗い影を落としていた人々の心の中に染み込んでいき、二手に分かれていた人々も一つへとなろうとしていた。 平和を望む者たちと、戦いを望む者たちの争いは静まり返り、平和が訪れた。 それから、十年。 人々は活気に溢れ、楽しい生活を過ごしていた。 十年前に起きた二条の光の出現によって、人々は皆変わり、お互いが思いやりを持って接していき、安穏とした世界になった。 その世界に、もう一度、暗闇が訪れようとしていた。 暗いものが、徐々に徐々に世界を覆い尽くそうとしている。 第一章「旅立ち」 セレニア王国・国王ラズイール=ルフィトスの国民への朝の挨拶が終わって、城の前の大きな広場は、人々が自分達の家へ帰ろうと散っていくところだ。 人々が去った後、広場の中央にある噴水の前で、銀の髪の青年が立っている。 銀の髪が、太陽に照らされている。 青年は、大剣を背中に背負い、少し冷めた表情をしている。 「ラズイール陛下から、お仕事もらってきました。」 と、青年の背後、つまり、噴水の向こう側から少女の声がした。 凛とした声で、やわらかい口調だ。 「アフェ。ラズイール陛下からもらってきた仕事って何だ?」
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