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アラードの指が指す方向に目を向けると、木の看板が立てかけてあった。
『ラフテフ花畑はこの道をまっすぐに』と、書いてある。
アフェは、ラフテフの匂いを楽しみながら、本を読む。
木々が風に揺れ、小鳥がさえずり、春の訪れの風の舞。
風の舞から香るラフテフの甘い匂い。 ずっと感じていたい春の訪れの香りを、アラードは浸っている。
ラフテフが大好きな少女の顔が、目に浮かぶ。
花のように可憐で、いつも明るい笑顔を浮かべて自分のことより他人のことを心配する少女に、アラードは、いつも心が癒されていた。
なのに、あんな事が…。
あいつらに…。
俺が、そばにいてやれば、あんな事にはならなかったはずだ…。
守ってやれなかった自分が情けない…。
と、アラードは思う。
「アラード様?どこか痛いのですか?」
と、アフェが心配そうに声を掛けてきた。
苦痛に耐えているような表情で、アラードはじっと地面をにらんでいた。
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