エウレカ物語Ⅰ

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“孤独の海にいる、愛しき人よ。 暗闇の中から必死に手を伸ばし、恨みの声を上げ、黒きものを身に纏いし人よ。 声が涸れるまで、その黒き怨念を生きとし生けるもの全てに、向けている人よ。 わたくしの胸の中にある、この黒炎の想いとともに、この世界を闇へと変えましょう。 共に歩み、共に世界を変え、欲望があるままに闇で覆い尽くすのです。” 暗闇の中から、女の声がした。 黒き光を、女の身体から発光させ、全身からまがまがしい気を発している。 時折見える、うっすらとした蝋燭の淡いオレンジの光が、暗闇に浮かんでは消えていく。 女の邪な気の光のせいで、蝋燭は、点いては消え、点いては消えの繰り返しだ。 女は、じっと何かを見ていた。 暗闇の中なので、何を見ているのかは、うっすらとしか見えない。 ヒュー、ヒューっと、どこからか風が吹いた。 風と共に、いつのまにか女も消えている。 残っているのは、オレンジの光だけだった。 光の中で見えるのは、ゴツゴツとした岩壁だ。 その岩壁を沿って、下まで見てみると、井戸みたいなのがあった。 女は、その井戸みたいなものから何かを見ていたとわかる。 また、風が吹いた。 この岩壁の外は、太陽に照らされ、様々な生き物が住む森がある。 光が射し込み、生き生きとした草や木が生え、森中を駆け回る動物がいる。 その生きた光の気とは違って、この岩壁の中は、暗闇の邪な気が支配していた。
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