536人が本棚に入れています
本棚に追加
「善兄……。ちゃんと、すぐ帰るから。いいでしょう?」
冬樹がそう、訴えた。
「絶対?」
「うん、絶対。ちょっと散歩したら帰ってくるから」
「……分かった。じゃあ、気をつけてよ?」
うん、と冬樹が返事をして立ち上がった。マフラーを首に巻き、静かに家を出て行く。
外は確かに寒かった。吐き出す息が白く、そのまま消えていく。
「……」
歩き出して、冬樹は夜の空を見上げ、またたく星をぼんやり眺めた。
「いくつ空には星があるんだろう……?」
呟いてから冬樹は足を止めた。歩道に人の姿は全くない。車道にも車はなく、冬樹は自分1人に思えた。
「星は何故、輝く……?輝くのに意味はあるの……?気が遠くなる年月をかけてやってきた星の光は……もう、終わった星の光かもしれない……」
呟いてから冬樹はしばらく無言で空を見た。
最初のコメントを投稿しよう!