536人が本棚に入れています
本棚に追加
「もしもし?……鋭?どしたの?……うん……うん……うん……。じゃあ、今から行くから。ごめんね」
電話を切り、善が立ち上がった。
「どうしたの?」
「冬樹が倒れたって。鋭が偶然見つけて、今、鋭の所にいるんだって。ちょっと行ってくるね。遅い時間だから先に眠ってていいからね。行ってきます」
善は言ってからコートを着て家を出た。
「――来たか。今は眠っている」
柳原鋭。彼は善のバックバンドのベーシストで、善が学生時代にはバンドを組んでいた仲だ。
標準より少し低い身長に、名の通り鋭い目。偉そうな口調に大きな態度だが、善の信頼の厚い友達だった。
「ごめんね、鋭」
鋭の住むマンションのソファーに冬樹は横になっていた。出かけたままの格好だ。
最初のコメントを投稿しよう!