536人が本棚に入れています
本棚に追加
「――はぁ……はぁ……」
ギターを落とし、少年は膝をついた。胸をおさえ、荒い動悸に耐えている。
「う……ぁ……!っ……く……!」
少年は綺麗な姿をしていた。年は17ほど。白く透き通っているように見える肌。端整で綺麗な顔。細見で、一見弱そうな体だが、儚い美しさにも似た不思議な魅力がある。
そんな少年とは裏腹に、もがき苦しむ姿は痛々しかった。声にならない悲鳴をもらし、胸をかきむしるようにしている。
「が……ぁ……!」
身につけた白いコート。暖かそうなそれも、少年が膝をついてもがくから、土色に汚れていた。
コートと同色の白いズボン。赤いカシミアのマフラーがアクセントになっているが、それも地面に落ちた。
「……あ゛ぁあぁ゛ぁ……!」
少年が体を倒した。尚も、少年はもがき続ける。足を曲げ、瞳から涙を流し、土色に汚れた格好で。
やがて、時間が経ち、少年は最後に大きく、びくりと体を動かすと静かになって、動かなくなった。
暗い雪夜を、僅かなネオンが照らし、人工的に染め上げていた――。
最初のコメントを投稿しよう!