TOUKI / WINTER TREE

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「何ですか?」 「……激しい運動は止めていたはずだ。激しくなくとも、息が切れる行為などもしないように、言った。破ったのか?」 医者として、はっきりさせておくべき事だった。 「破りました」 躊躇いもなく、冬樹は答える。陸を見て、それが何か、と言わんばかりの目を向ける。 「お前は死にたいのか?」 「……死んじゃえば、楽でしょうね。死んじゃえば、苦しまない。死んじゃえば……ですけど」 「お前が、死にたいかどうか聞いている」 大きな人だな、と冬樹は改めて思った。初めて見た時は幼さも手伝って、怖がった。 「時と場所によります」 「……時と場所?」 「死ぬのなら、僕は綺麗な場所で死にたいです。道端に倒れて死ぬのはイヤです。だけど、チョモランマの頂上とか、エアーズロックを見ながらとか、ナイアガラの滝を見ながら死ぬのなら、本望ですよ。死んだって、構いません」 冬樹は心臓の病を患っていた。治らないだろうとされている。だんだん、死が近付いているのが分かっていた。
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