第0章:プロローグ―その身に纏いしは"漆黒"―

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 アーシディア、かつて起こった大戦争の遥かなる終焉の審判より、五十年の月日が経過した世界。 それまで世界を支配していた王国は崩壊し、時代に新たな風が吹き込まれた。 現在では、四つの国によって世界は構成されている。 そしてその若々しい青葉のような大地を一人の少年が踏みしめる。 透き通るような隼眼の瞳、首より下を覆うように着ている黒のローブ。 そのローブの下には、ゴツい革製のベルトに大型の黒の装飾剣銃が携えられている。 黒飾剣銃とは、漆黒を思わせる銃身に、刃が装着された巨大な銃、ガンブレイドのことである。 風が吹いたのか、少年の黒髪が自慢気に踊り出す。 少年の名前はクラウン=F・C。誇らしげに光る黒飾剣銃、アザゼルは彼の代名詞として有名である。 それもそのはず、クラウンはその若さで名を馳せる、トップクラスの装飾剣銃使いなのだから。 「ルーシア、次の目的地までは?」 瞬きを二回ほど繰り返し、呼びかけによって姿を見せた耳の長い小動物に向かって尋ねる。 「クラウン、次の目的地はアルヴァース国、王都ラノンギルディアだよね? それならあと5㎞くらいだよ」 それは黄色の体毛に愛らしい瞳と、先に白い毛の生えた長い尻尾、そして長い耳を持つ小動物である。 「5㎞…か。休もうぜ?」 真剣な顔付きで提案するクラウンだが、ルーシアと呼ばれた小動物はそれを許さなかった。 「何言ってんの!?今休んだばっかりじゃないのさ!」 「あ~、はいはい!わあったよ、この小言魔め…」 などと悪態をつくクラウン。 「いいから、早く歩いてよ」 「自分で歩けってんだ、てめぇ様はよぉ!!」 肩に乗ったルーシアの鼻をつまみ、クラウンは引っ張り上げた。
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