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気付くと、俺は倒れこんでいた。あの女は消えていた。そばにはちゃんと射影機もある。
「よかった…」
ズキズキと悲鳴をあげる頭を押さえ起き上がって辺りを見回すと、古泉の姿がなかった。
「古泉!!」
二階の廊下から下を見下ろすと、調度古泉が玄関へ続く扉に手をかける所だった。
「何処行くんだよ古泉、ちょ…待て!」
古泉は止まる様子がない。扉を開け、不意にこちらを向いた。
「すいません…僕…いかなくちゃ…」
虚ろな顔と声だった。明らかに正気ではない。
「古泉ィ!!!!」
閉じられる扉。頭にまた映像が流れてくる。古泉が、外を歩いている…紅い蝶に導かれて。
しばらく進み細い路地に入る。目の前の少し先に、紅い蝶を纏わせた、白い着物の女が――
不意に視界が自分の元に帰ってきた。今の、古泉の行動なのか…?
とにかく追い掛けるしかない。古泉を一人にしてはいけない。
…何故か、不意に思った。
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