001:ユウとミウ

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「みう!わりぃ!おそくなっ……」 俺は言葉を失った。 暗くなった夜の中でスポットライトのように月の光に照らされた、 宝石のようにキラキラ輝く綺麗な桃色の髪を流れる風になびかせながら 俺だけにしてくれる、まるで天使のような笑顔を浮かべる華丘美羽の美しさに。 「こうら」 彼女にそう呼ばれて我に帰る。 「あ…ご、ごめんね……」 びっくりした……今更ながら華丘美羽の美貌に……。 俺はもしかしたらとんでもない人を彼女にしたのかもしれない……。 華丘美羽は笑顔をそのままに、トタトタと俺の目の前まで駆け足で来てくれた。 「みう、待たせたか……?」 「ううん。こうら、すっごく速かった。だから、みう退屈じゃなかった」 華丘美羽の言葉を聞いて俺の中でなにかが少し込み上げてきた。 ド胸キュンじゃない…何か別の……。 「そっか、それはよかった!帰ろうか」 「うん」 告白の返事をくれた時と同じ調子で華丘美羽は返事をした。 暗い夜道。 月と星と家の電気と街頭が照らしてくれている道を俺と華丘美羽は二人並んで歩いていた。 その二人の雰囲気は、まわりから見てカップルと呼ばれてもおかしくないものだ。俺が一年間夢見たものだった いつか…あの華丘美羽を横に連れて…この道をあるけたら……。 毎日家路につく時に見る夜空にそんな想いをはせていた。 今その想いが星に届いて現実になり、俺の横には華丘美羽がいる。 いつもどこか虚しさを抱えながら帰っていたこの道。 今は違う……。 俺…今しあわ 「こうら」 「ふぇ!?どうした!?」 ちょっとぉ…みうタン! 俺が最高にかっこよく締めようと思ったのに……。 あ、でも物思いに浸りすぎて会話をしてなかった……! 「あぁ、ごめん!俺ぼーっとしてて何にも話…」 「……みうの家、着いたよ」 うわぁ…やっちまったよぉ……せっかく夢見た一緒の帰り道だったのに……。 「ご…ごめん……」 「………」 流れる沈黙。怒ってるよな…。 俺…ずっとじぶんのことばっかりで……。 「こ…うら……グスッ…… なんで……謝るの……?ヒック……えぅ………」 「みう………?」
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