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「1年たって…今日、話かけてくれた……。みう……こうらの名前、覚えてた……だから…名前、呼んでみた………。
もっとこうらとお話したくて……みう、自己紹介した……。初めて……他人に自己紹介した……。なのにこうら、みうの名前知ってた……」
俺は華丘美羽の顔を見据えながら話に耳を傾け、要所要所に相槌を打った
「もっとお話したいって思ったの……みう、こうらが初めてだったから……」
喋る事が苦手という彼女が、俺の為に一生懸命喋ってくれている様子を見て、込み上げていた何かがさらに強くなっていくのをかんじた。
華丘美羽の唇はまだ動く。
「こうら……みうのこと、好きって言ってくれた………。その時にみう、笑顔になれた……。
なんでか……わからない……ぐす……こうらの事だけは……素直に喜んだり…怒ったり……できるように…なったの……。
なんでかわからない……けど…あぅ……ひっく……とっても……とっても幸せなの………こうらぁ……!」
言葉を紡ぐ度に華丘美羽の唇は震え、また涙が溢れてくる。
「みう……。ゆうでいいよ」
「えぅ…ひぐっ……ぐすん……だから…ね……?みう…ゆぅには、言えるよ……?みう…ゆぅの事………好きぃ……!」
華丘美羽から初めて聞いた好きという言葉に、込み上げていたなにかが爆発して
俺は無意識のうちに、涙を流しながらみうを腕の中におさめていた。
「うぅ……ひっく……ゆぅ……好きぃ……」
「俺も好きだ……みう……!大好きだ……!!」
華丘美羽の小さなか弱い体を溢れる思いに任せてきつく抱きしめた。
伝わる体温、髪の香り。啜り泣く声。
全てが愛おしくて……かわいくて………もうどうしようもない。
ひたすらお互いに泣きながら名前を呼び合って、しばらく抱き合っていた。
俺の体には高嶺の華の香りが染み付いて
もう…消えることはない。
一分くらい抱き合ったかな……そろそろ恥ずかしくなったので腕をほどいた。
「じゃあ……また明日な。みう」
「ゆぅ……」
帰ろうと背中を向けたが、寂しそうな声でみうに呼ばれたので振り向かざるを得ない。
「どうした?」
「ゆぅにぎゅってしてもらうと……みう、安心する。
あの怖い人に、話しかけられた時も……ゆぅにぎゅって、してもらって……安心したの。
みう、ゆぅに…ぎゅってしてもらうの……大好き。だからね……?」
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