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外は黄昏…
言葉通りまさしく誰そ彼(たそかれ)時。暗さを宿した紫色の空。
雲は無いのに陽光が遮られているかのようだ。
街には人通りもほとんどない。皆、今日の夜は警戒しているようだ。
家に入ってさえいれば、悪い精霊は入ってこないから…。
セラフは大通りを通り、街はずれに向けて歩き出した。
誰も近づきたがらない雰囲気を隠すことなく出し、だだっ広い大通りの真ん中を歩くセラフを、わざわざ避けて人は歩いていた。
セラフはそれで良かった。教会騎士が緊張感を持てば、それ自体が警告だ。市井の者は立場を理解し、やるべきことをただ守ればいい。そんな考えだったからだ。
だが不意に呼ぶ声がした。
振り向くと、そこにはガーネットがいた。
「…そんな仰々しい兵器、どうするのよ?」
ガーネットは、セラフが余分に持ち歩いている武器を指差し言った。
「その兵器、始めてみるんですけど…」
「そうだろう…一昨日支給された物だ」
「ふ~ん…で?」
「これでか?…黒月を抹殺する為に決まってるだろう」
――決まってるだろう
酷い響きだ。
人を殺す事に、何の抵抗も無いのだろうか…。
「もうちょっとまともな言い方できないかな?
例えば…市民を守るため!とか」
「今は戦争中だからな…。言い繕う事はできても内容は変わらない」
「でもさぁ……」
「悪いがゆっくり話つもりは無いんだ。
話すなら、今度の満月にしてくれないか」
セラフは一方的に会話を終わらせ、またさっきのように大通りを街はずれに向かって歩いて行った。
その姿をガーネットは見送っていた。先程のセラフの言葉がまだ耳にこだましている。
「確かに…そうだけどさ……あんな言い方、ないよ」
―セラフは何時もそうだ。
今度会ったら言ってやるんだから!!
セラフの言葉に悲しみながら、ガーネットは教会への道を歩いた。
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