白都にて…

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  ガーネットが教会へたどり着くであろう頃、セラフは街はずれの墓地についた。 今の戦争で、死んだ人が埋葬される墓地。 管理者が不在の今、簡略化された葬儀で済まされた淋しさ墓地。   石の墓標はなく、儀式に用いる宝剣を地面に打ち込み騎士の墓としている。 他にも並ぶ教会の杖は教会関係者の墓、ただの丸い石が置かれたのは市民の墓だ。 あまりにも粗末だが、戦争が終わればきちんとした物にするらしい。 そう言い続けながら、戦争は12年にも渡り続いている。 82の剣、106の杖、4つの石。これが12年での死者の数。他の戦争に比べて、死者は圧倒的に少ない。少ないが、セラフ達教会騎士が守れなかった数だ。人1人にのしかかる重さは計り知れない。     セラフは1人墓地にたたずみ、目を瞑り黙祷を捧げた。 風が冷ややかに流れ、空気が闇を吸収してきたのがわかった。 しばらく祈りを捧げた後に、セラフは誓った。   「白都は勝つ。我等が神は新たな力を授けて下さった」   そう言って、あの兵器に触れる。鉄のそれは冷やりと冷たい。   「我等の文明が、神が…あんな邪教などには負けない。 もうすぐ戦争を終わらせる。だから、もうしばらく待っていてくれ」   誓いの言葉を言い終えたセラフはその場に座り込んだ。そしてある墓標に手を伸ばした。 儀式用の宝剣に刻まれた名前は、『ベリアル』。 セラフと同時期に、騎士団に入団した親友だった。騎士団の中でも屈指の実力のある彼が死んだなんて、セラフは未だに信じられなかった。   「…もう、数年になるか」 …君の死は、俺に悪魔を払う力を与えてくれた。 仇を討ち払う勇気が、体に満ちていく。ベリアルが勇気を与えてくれる。       数分して、セラフは立ちあがった。 瞳に殺意を漲らせて…。
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