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大………国が治めし領土は全て教えを広めた。
賢王は我等に船なる物を与え、更に教えを広める為の道をくださった。
我等はこれから海を渡り異国の地に神を伝える事になる。
正直に言うと海を渡るのは不安でならない。
海の神は生まれたばかりで力の加減がうまくできないらしいから、風の神が海に近づけないようにしていると、女神が言っていたのが懐かしい。
だが、臆していては恩を返すことはあたわず。
我等は進むことを決めた。
…あれから何年立っただろうか、こうして記録をつけるの自体久しい。
4人の乗った船は嵐にあい砕けたのだ。
そして私は遠い、遠い地に流れ着いた。海の神も命までは奪わなかったらしいが、他の3人の安否が気になってならない。
できることなら無事でいて欲しいが、私が助かった事が奇跡であるのはいうまでもなく…見知らぬこの土地に骨を埋める事になるのも言うまでもない。
この地の人々は喜んで教えを受け入れているのだし、私1人で、歪める事なく教えを広めなければいけないのは少し骨が折れるが…使命ならば苦であるはずがない。
1人になった今、この記録ももう必要無いのかも知れない。
…
…あれから何十年という年月が流れただろう。
私もすっかり老いた。今ではこの地の父とまで呼ばれている。それ程までに、教えを、私を受け入れてくれた。ありがたい事だ。
だが、今回の記録はこの様な事を書くためにつけているのではない。
夢に女神が現れたのだ。あの時の美しさのままに…聞く話によれば、女神はあの数年の後に天へと昇ったらしい。
全ての神を統治する存在として…。その時、我等は海を渡ろうとした時期でもあり、全てを見ていたとの事だ。
あの後の3人も、もとの地に流れ着き、生死の境を行き来した後ベルフォーレンが命を落とした。残された2人は陸路、海路に別れて更に教えを広める旅に出た。
陸路のファンナーナは野犬に襲われ、海路のリヴォラードは海に飲まれて、2人共すぐに死んだそうだ。
国の賢王はもすぐ天寿を全うとされ、地へと還ったらしい。
それだけならば、女神も我が夢に現れ無いだろうが、事態は善からぬ方向に進んだのであった。
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