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「なんと言われようと…無理な物は無理だ。嫌ならこの地から立ち去るんだな」
「そんな…殺生な…。この地に根を張り、土に帰った我等が祖が崇めし神を捨て、立ち去る事などできませぬ」
「貴方様の国に加わることはできようと、信仰を捨てる事はできませぬ。どうか…わし等から神までは奪わないで下さい!!」
「奪う…だと?奪うも何も祖が誰だか知らんが、名前が同じ女神ではないか。何を奪うと言うのだ?」
「わし等にはわし等の信仰が御座います。今の信仰に、教会が上に立つのは祖が教えに反します」
「ええい…聞き分けの無い!!セラフ、もう終わりにする!こいつを外へ出せ」
何十回と続いた同じ問答は、この一声と共に1人の教会騎士が懇願する老人を教会の外に出した事によって終わった。
しかし、なおも老人はすがりつく。
「お願いです!どうか…わし等の信仰だけは…」
「我が国の習わしに従いたくなければ、離れた土地に行くんだな」
セラフと呼ばれた教会騎士は、老人を一蹴し教会の中へ入り、扉の錠を閉めた。
ドンドンと外から叩く音を気にもとめずに、セラフはマジョロ神父の部屋へ向かった。
部屋についた時のマジョロ神父ときたら…かなりの怒り状態で、セラフの顔をみる度に愚痴を怒鳴り散らした。
一通り発散した後、少し冷静になったマジョロ神父は一息ついてからこう言った。
「はっきり言って…あれは邪魔だな。長老会に申請してくれ。許可が降りれば騎士団を以てこの地を去るか、信仰を捨てるか選ばせてやろう…」
セラフは『騎士団を以て』と言う部分を聞いて笑みを浮かべ了解の返事をして、部屋を出た。
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