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老人は集落に帰るなり会合を開いた。集められた人めまた、老人と同じ女神を同じ信仰で崇めし部族だ。
老人は今し方告げられた宣戦布告をそのままに伝えた。
当然、非難が飛び交った。
「土地を奪うだけでは飽きたらず…神まで奪うと言うのか」
「奴らは人の核を失っている。魂無き人間は悪魔より劣るであろうに」
「…権力にまみれた神など、崇めたく無い!!」
部族長達は様々に白都の教会を罵った。
黙って聞いていた老人であったがいい加減、口を開いた。
「人間としての善し悪しや信仰心に文句を言ってもしょうがないよ」
「それよりも…」
「継父!!、戦いましょう」
老人の言葉を最年少の部族長が遮った。
老人がまさに切りだそうとした事についての意見だった。
若き部族長の曇り無き眼を見ながら老人はつづけた。
「タロ…気持ちはわかるが話を聞きなさい。わし等が悩む理由は…信仰を捨て切れなんだ理由は、この地に根を張り土に帰った祖に敬意を払っているだけじゃ無い。
祖がもたらした教えと共に育ったこの地を離れたくないだけじゃ無い。
彼等が赦せんからだ」
「『神は信心と共にある』祖が言ったとされる言葉じゃ。
この言葉の意味を、わし等ほど理解している者は居らんじゃろう…」
「だのに、彼等はさも全てをわかったかのような言い種で『同じ神』だとほざきおった」
「わしはそれが赦せん!!」
この地にこだわったのは、一種の抵抗であり…プライド。
神は信心と共にある。
この言葉を深く理解しているこの部族には、祖が眠る土地を手放すのは惜しくともできる。
しかし、そうまでして守ろうとした神を、信仰を侮辱する言葉には我慢ができなかった。
無論、それが理由になるわけも無く…マジョロには他の理由で通していたにしろ…。
同じ名の女神を持っていても…
老人達の部族は引き返せない道へ進む決心をした。
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