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* * *
少年は今日も食料を求めて海へと足を運んだ。
浜辺へ駆けて、そのまま飛び込んだ。
もともと服を着ていないのだから何も気にする事はない。
ここら辺の海はもう泳ぎ慣れていた。
流れも深さもよく分かっている。
泳ぎだって上手だった。
今日もまた、魚を二匹、簡単に捕まえた。
道具はない。 いつだって素手で捕まえてきた。
初めは苦労した漁も、今では当たり前の様にこなしている。
15分かけて火を炊いた後、細く強い枝に刺した魚を炙り始めた。
少年は“幸せ”そうな笑みを浮かべながら、チリチリと音を立てて焼け上がっていく魚を見つめていた。
「♪」
今日は美味しい魚にありつけた。
一気に二匹をたいらげた後、少年はいつもの様に海の向こうを眺め始めた。
いつ頃からだったか、海の向こうに見える小さな小さな何かが気になって仕方がない。
その小さな小さな何かはいつも動かないでそこにいて、空に合わせる様に色を変えていく。
「…」
またどんどん色を変えていく。
「…!」
ふと気が付くと辺りが暗くなっていた。
少年は、この色んな顔をする空が大好きだった。
海も好きだけど、空の方がもっと好きだった。
今日は雲ひとつ無い空。 たくさんの星が瞬いて、静かで心地好い風が少年を包み込む。
「…」
入江から少し離れた所で寝転んだ少年は、波の音を聞きながらそのまま眠りに就いた。
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