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「ごめんなさい!」
少年は椅子に座るなり謝った。
「何してたの?」
「…ごめんなさい」
「分かったから、何してたの?」
「…分かりません…」
「分かりませんって…自分が何してたか分かるでしょ!?」
「…ごめんなさい…」
「それは分かったから。 一体何してたの?」
「…分からないんです。 気付いたらあそこにいて…」
「え? どういう意味よ。」
「…僕も分からないんです…。 ここ何処ですか?」
「はぁ!? っていうかまずあなた誰よ」
「……分からない…。僕誰だろう…」
「………記憶喪失?」
「そうなんですか?」
「知らないわよ! こっちが聞きたいわ! はぁ…話にならない。 喉が渇いたわ。 何かいる?」
「え? …じゃぁ…紅茶を下さい」
「そこはハッキリしてるのね」
「すみません…」
「はいはい」
少年の名前も、何故そこにいたのかも分からないまま、二人は紅茶を飲む事にした。
「私も紅茶が好きなの。 偶然ね」
「はい」
「…あぁ…本当に名前分からないの? 何故ここにいたのかも?」
「はい…すみません…」
「分かった。 信じるわ。 とりあえず今日はもう帰って良いわ」
「………あのぉ…」
「何?」
「家も分からないんです…」
「えー!? どーするのよ!」
「どうしたら良いんでしょう…」
「どうすんのよ!」
少年は自分の家すら分からないと言った。
いつの間にか辺りは暗くなっていたので、とりあえずエリカは少年を泊める事にした。
「ここ空き部屋だから、気にしないでゆっくりして。 オヤスミ~」
欠伸をしながらエリカは部屋を後にした。
「そう言えば何て呼べば良いのかしら」
独り言を言いながら眠りに就いたエリカは、何事もなかったかの様にぐっすり寝てしまった。
少年は自分が誰なのか必死に思い出そうと躍起になりながら、いつの間にか眠ってしまった。
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