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* * *
翌朝エリカは、少年を大広間に招いて食事をした。
目を覚まして慌ただしく、少年が執事に連れられ大広間に着くと既にエリカがそこにいた。
「おはよう」
エリカの澄んだ声が広間に響く。
「おはようございます」
「よく眠れた? さぁ座って」
「はい。 あぁ…、どこに座れば…?」
無駄に広すぎる空間に、これまた無駄に長いテーブルが真ん中に堂々と置いてあり、エリカはその一番奥中央に座っていた。 この無駄に長いテーブルの一番奥、エリカの席からこちら側、大広間の入り口側まで、数え切れない程の椅子が並んでいて、だから少年はどれに座れば良いのか困惑した。
「そこよ、そこ」
「そこ…」
あぁ、なるほど。
目の前の席に置いてあるナイフとフォークがその証拠だろう。
「!!」
少年は椅子を引こうとして危うく転けるとこだった。
「どうぞ」
執事が左手を椅子に向けて仰いで微笑んだ。
少年は、広間の広大さとテーブルの異様な長さ、そしてありったけある椅子の数に圧倒され、目の前にあるナイフとフォークにも、執事が椅子を引いてくれていた事にも気付けなかった。
大広間の奥からは、エリカの笑い声が聞こえた。
少年は顔を赤くして、小さくなる様に椅子に座った。
「執事が何でもしてくれるから、早く慣れなさい」
そう言いながら、エリカはまだ笑っていた。
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