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血の気を失った頬を撫でながら、額や瞼に口付けを落とす。
「何だかみんな、おかしかったねぇ」
首をかしげ、少女は少年の両頬を優しく手で包んだ。
「ずっと泣いててさ、何が悲しかったんだろうねぇ?」
さらさら、少年の髪を指で梳いて反対側に首をかしげる。
その少女の瞳に、光はない。
少年の魂は、もうここにはない。
少女の精神は、もう戻らない。
失ったものは、壊れたものは、もう。
だから誰も咎めない。
だから誰も真実を語らない。
『かわいそうな―― 』
空っぽの、器。
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