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「力が…。」
二人組のもう片方の人が初めて口を開いた。耳障りするほど高くない女性の声だった。
演奏はなおも続けられていた。
『アレ』-音律魔法は様々な効果を持つ一つ一つの音符を並べ、それを演奏する事によって、相手に影響を及ぼすものだ。視覚系、幻覚や幻聴。又は音そのものによる振動による物理攻撃や脳や神経の攻撃が主で、中には天候をあやつったり、死者を蘇させたりするものもある。最もそこまでできるのは余程音律魔法の才能のあるものだけだが。
青年のものは筋肉、神経に影響を及ぼし、音律魔法対象者を力を入られない状態にする初級魔法だ。
マスターは暫くは動けないだろうと油断をして背を向けてしまった。その時だった?。
<<♪♪♪…>>
マスターが床に倒れた。その衝撃でマスターは思わず「うっ」と声を漏らす。
「マスターッ!!」
舞台袖にいた青年は、ステージを飛び降りマスターを助けようとする。だが青年もまた、二人組の音律魔法によって床に倒れる。
「…!!貴方は…」
まるで床に貼付けられたように動けない青年の顔を見て、二人組は音律魔法を止めた。その途端マスターと青年の体は自由になる。
「貴方の名前…教えて貰えないかしら?」
二人組のうちの女性の方が青年に尋ねる。青年はこう答えた。
「あんたらがなんの目的か知らないけど…。人に名前聞くなら自分たちから名乗ったらどうだ?礼儀知らず!!」
二人組の片方、男の方が淡々と答える。
「よく吠える男だ…。主、本当にこいつが目的の奴ですか?」
主と呼ばれた女性の方が言った。
「私の感が正しければだけど。…こんな事して言う事じゃないけれど…私たちは貴方たち二人をどうのこうのするつもりはないわ。もちろんここに来たのも貴方たちを襲う為でもないし…。当然ながら私たちはラルゴの配下でもない。」
「ふん…。嘘ならもう少し捻ったものを使うんだな…。」
マスターが主の言葉に噛み付く。
「主、やはり信頼はしてもらえないですよ。自己紹介を素直にした方がよろしいかと。」男が言う。
「そのようね…私の名前は?。」
「うわぁぁ!!!」
青年が頭を抱えて、叫んだ。顔は苦痛に歪んで額からは油汗が流れている。マスターは青年の元に駆け寄る。
「大丈夫か?!…アル!!!」
マスターの言葉に主は反応する。
「やはり…貴方が…。」
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