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主は青年、アルの元に駆け寄った。
「貴方アルって言うのね。私の事は知ってるかし…。」
「今アルに話しかけないでほしい!」
マスターが怒鳴る。主はそれに思わず口をつぐむ。
「…どういう事ですか?」
男は苦しむアルを見ながらマスターに質問した。マスターはアルを落ち着かせながら言った。
「アルには記憶がないんだよ。そして記憶を思いださせようとすると今みたいに苦しむのだ。記憶のきっかけでもだ。恐らくアルはあんたを見て発作を起こしたんだ。…あんた口ぶりからしてアルの知り合いなんだろ?」
主は頷く。
「ええ…、でもアルがなぜここに…?そして何故貴方がなぜアルの名を知っているんですか?」
マスターはアルの背中を摩っていた。するとアルは徐々に落ち着いていった。
「この子の事を話すのにあんたは信頼しがたい。先程言ったようにラルゴの繋がりがないとは限らないしな。」
マスターは二人を見る。その目は警戒していた。その警戒を解くように主は言った。
「…まず私たち二人がラルゴと関わりがない証拠はさっきの音律魔法で充分だと思われます。ビーレは音楽が禁じられていますからね。そして私とアルとの関係を話すべきですね。私とアルは共に演奏した仲間です。…この楽器を見てください。」
主が差し出したのはサックスだった。それはアルと同じ造り、色だった。
「アルと同じサックスを使っている、これがアルとは浅くない関係である事は信用して貰えますか?」
マスターはしばし考えこんだ。そしてやがて?。
「…ラルゴの手下ならこんな回りくどい事しないで問答無用で酒場を破壊してるだろうしな。それにアルと似た造りのサックス。……わかった、あんた達を信用しよう。」
と言った。
主とその後ろにいた男はほっとため息をつく。
「信用して頂いてなによりです。あっ!!申し遅れましたが私の名前は『ナナ』と言います。こちらの男は『ナーテ』。」
男、ナーテはぺこりと礼をした。
「いやいや、こちらもいきなり襲うなどとんでもない事をした…。非常に申し訳ない。」マスターは頭をかいた。
主、ナナは
「早速聞かせて下さい。」
と言った。一秒でも早く聞きたかったのだ。
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