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「もうちょっと早く起きたらバタバタとしなくて済むのに…」
花澄が冷たく言う。
「解ってるんですけど…目覚まし止めて二度寝しちゃったんですよ」
その女が言い訳を述べながら暑そうに、長い髪の毛を触るとエレベーター内に甘い匂いが広がった。
花澄は横目で後ろに立つ、男性達の顔を見る。年配の管理職に付いていそうなオジサンまでもが…目を細め、花の匂いを嗅ぐ様な顔をしている。
「…ッホン…」
わざとらしい咳払いを花澄がすると、男性達は慌てて目を開け明後日の方向に目を泳がせる。
そして、その女は後ろを振り向き男性達に申し訳ない顔でこう言った。
「すみません…汗臭いですよね。本当にすみません…」
花澄の咳払いを、自分の汗の匂いだと思った女が後ろの男性達に謝ると、男性達は寧ろ、良い匂いだと言いたげな笑顔で挨拶を交わす。
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