郵便でーす

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五年後。 キシダマリコは、言い争いをしていたミハラトウコが消えてなくなるのを目の前で見届けた。 跡形もなく消えた、ミハラトウコ。 残されたキシダマリコは唖然としたままだ。 「私は五年前のミハラトウコに手紙を出しただけよ?旦那と別れるようにいっただけよ?なぜ消滅するの??どういう事??」 キシダマリコは知らない。 七年前、トウコがキシダに助けられた事を。 ミハラトウコは詳細を覚えていない。 七年前、トウコは酔っ払いに道路にむかって押された事を。 キシダだけは覚えていた。 七年前、道路に倒れて車にひかれそうなトウコを助けた事を。 しかし、キシダの武勇伝も、消えてしまった。 二人は出会わなかったのだから。 キシダは今日も、妻が待つ家へ、月明かりの下、帰っていった。 何もなかったように。 何もなかったのだから。
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