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トウコは何度も手紙を読んだ。
何度も、何度も。
封筒に入っていた、真新しいレターセットも確かめた。
トウコはもう一度、手紙を読んだ。
あまり吸わないまま、根本まで燃え尽きたタバコを灰皿に押し付けると、手紙をテーブルに投げ出し、またタバコを取り出そうとして、手を止める。
デートの後のタバコは一本だけって決めてたんだった・・・。
しかし、トウコはタバコを取り出した。
キシダはアルバイト先の上司、妻帯者だが、トウコと深い関係に落ちるには時間はかからなかった。
今は、まだ「不倫」だが、トウコはこのまま落ち着くつもりはない。
ゆくゆくは、彼と暖かい「家庭」を築きたいと願っている。
ゆえに、今、噂をたてるのは失策、トウコは誰にも二人の関係を話した事はない。
それはキシダも同じだろう。
誰かに知られては、会社の立場も危うい。
・・・。
手紙は、二人の関係を知っていた。
本物・・・かもしれない。
誰も入れないこの部屋に、手紙だけ、置いていくなんて。
本物・・・の気がする。
トウコは深々とタバコを吸った。
月明かりに煙がくゆる。
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